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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(れ)536号 判決

本籍

大阪市西成田区松田町二丁目一八番地

住居

東京都豊島区池袋町二丁目八六六番地

(現在、東京都練馬区関町四丁目、慈雲堂病院内)

露天商

大原健八郎

大正七年四月一三日生

右の者に対する銃砲等所持禁止令違反被告事件について昭和二五年一二月八日東京高等裁判所の言渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので当裁判所は刑訴施行法第二条に則り次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人太田黒常八の上告趣意は末尾に添附した別紙記載の通りである。

第一点について。

論旨は本件犯行後略二年六ヶ月後(原判決言渡より略六ヶ月後)に作成された医師の診断書を根拠として被告人は犯行当時精神に異状があつたか否かについて適当な調査をしないことは審理不尽であると主張する。しかし記録に徴するに原審においては被告人の公判廷における動作並に供述其他諸般の事情より判断して通常人と異るところはないと認め被告人の精神状態に関する特別の調査手続をしなかつたものと認め得る、そして裁判所は公判廷における被告人の動作並に供述其他諸般の事情に鑑み通常人と異るところがないと認めた場合はことさら精神鑑定等の手続をする必要のないことはいうをまたないことである、従つて原審には所論審理不尽の違法はなく論旨は理由がない。

第二点について。

論旨は前記医師の診断書を根拠として被告人は犯行当時心神喪失又は心神耗弱状態であつたと独断しそれを前提として原審が刑法第三九条同第六七条を適用しないことは違法であると主張する、しかし原審においては被告人は精神異状者であるとは認定していないし記録を調べて見るに原審の認定は何等法則に反するところは認められないから所論法条を適用しないことは違法ではない。従つて論旨は理由がない。

よつて旧刑訴四四六条により主文の通り判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

検察官 石田富平関与

(裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 小林俊三 裁判長裁判官長谷川太一郎は退官につき署名捺印することができない。 裁判官 井上登)

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